第三章 クライアントの願いを叶えたい!情熱のゆくえ
クライアントに言われるがまま、原稿を書き直すのは簡単だ。しかしそれでは、採用成果につながるとは到底思えない。これではらちが明かない。電話やメールだけのやり取りでは伝わらないと、鈴木はもう一度、単独でS社に向かった。
もう、いいじゃないか。クライアントがそこまで言うのだから、自分がここまでする必要はないんだ。

一方で、そんな考えの自分もいる。すでに締切時間もギリギリまで迫っている。しかし、最後まで諦めてはいけない。怒り心頭の社長に、鈴木はいま一度、説得を試みた。
鈴木「本当に必要な人は、社員教育も兼ねて業務を進めてくれる、経験者のはずです。」
高橋社長「だからといって、原稿内で会社の手の内を明かすような文章を見せたくない。それより、うちの技術力を伝えた方が人は集まるだろう。なんで分からないんだ!」
ゴールは、人を集めることではない。本当に必要な人を獲得すること。そのフレーズが、鈴木の頭にリフレインする。
鈴木「社長が欲しい人は、人材育成ができる経験者ですよね。その人たちはどんな人を教育するのか、具体的に知りたいはずです。技術力をアピールしても、また未経験の人しか面接に来ないのではないでしょうか。」
高橋社長が口をつぐんだ。
鈴木「御社がよい人財を採用し、それによって会社が発展していく。私たちの目標は、それだけです。」
原稿一枚に1時間半の交渉。譲ったのは、高橋社長の方だった。クライアントの会社を成長させたいという熱い思いと、自分なら採用成功に導けるという揺るぎない自信…それが、鈴木の勝因だった。
しかし、求人広告に「絶対」などない。結果がすべてだ。これから始まる4週間の掲載期間に、果たして有望な人財が集まるのだろうか?
