新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの日常は大きく変わりました。
『エン転職』を扱う中途求人メディア事業部でも、4月から在宅勤務に。「新しい生活様式」を実践しつつ、それぞれが仕事の進め方を模索しています。
その一人が、営業チームのリーダーとして活躍する上野光希さん。「メンバーのマネジメントが上手い」と、社内でも一目置かれています。クライアントからの信頼も厚く、他のクライアントを紹介してもらうことも少なくないそう。
これまでのやり方が通用しなくなった今、上野さんなら何かヒントを持っているかも…!そう思い、今回お話を伺いました。
「正直な所、最初はめちゃくちゃやりづらかったです。でも、そんなことを言っても、やるしかない。だから商談も、メンバーとのコミュニケーションも今までのやり方を少しずつ変えていきました」
上野さんはどうやってクライアントやメンバーと向き合っている?そして営業数字を上げているのでしょうか。「思うように仕事がはかどらない」「働き方が変わっても成果を出したい!」という方は必見です。

明日から実践できる!上野流「オンライン商談のコツ」
働き方が変わる中でも、最大限成果をあげるために。上野さんはどんなスタンスで営業活動をしていたのでしょうか?
「クライアントとの商談は、リモート化へ移行させていきました。“訪問してほしい”とおっしゃる企業さんも少なくありません。ただ、“定期的に提案したいからこそ、オンラインを活用させてください”と伝えることで、理解をいただけるようになりました」
そこにあったのは、上野さんの「攻め」の姿勢と言えるかもしれません。
「クライアントの状況も大きく変わっている。だからこそ、今までと同様のニーズがある企業さんの方が少ないと思うんです。だから、受け仕事ではなく、自分から提案機会を得にいくことを心がけていました。 “ニーズはないだろうから、提案はしない方がいいかな” “きっと今は採用どころじゃないはず” といった固定観念をなくすことも大事だと思います」
さらに上野さんはこう続けてくれました。
「ニーズがない企業はないと思っていて。そのニーズを自分たちでは解決できないと思っていること自体がもったいない。できることは絶対何かあるはずです。わずかな可能性を探すために、こちらから常に提案機会をもらいにいく。クライアントとの接点を作り続けながら、”提案しないで終える商談”をなくしていきました」
そしてオンライン商談実施時には、クライアントとのコミュニケーションでは量・質をあげる工夫をするようになったそう。ポイントは、意外と忘れがちな「細部への配慮」です。
①Zoom商談中は、その都度確認をする ・『資料は問題なく映っていますか?』 ・『ここまでで、不明点はありますか?』 など、対面の商談と比べよりマメに確認するようにしています。認識のズレって、もったいないですから。ひと通り話し終わった後は、『いかがでしたでしょうか?』と最後に感想を聞いて、先方の温度感をつかむようにしています。 ②リアクションは大きく! オンライン商談は、表情や声のトーン、身振り手振りが大事です。メンバーにはよく『商談では演者になれ』と伝えていて(笑)。いつもの自分より声をワントーン上げる、ゆっくり話すなど、相手に伝わるリアクションを意識しています。 ③動画映りを気にする 明るく見えるように照明に気を使ったり、おもしろいバーチャル背景にしてアイスブレイクをしたりしています。あと、クライアントによってはメイクも変えます。『今日なんかいつもと違うね』『分かりますか?実はリップの色を変えたんです!』と盛り上がることもあって(笑)これはどんどんやったほうがいいと思います! |
上野さんがクライアントとの向き合い方で大切にしているのは、「クライアントとフェアな関係を築く」こと。
「担当営業として、クライアントが困ったときには一番先に連絡してもらえる存在でいたい。だからこそ、積極的に提案をしながら宿題をもらいにいくようにしていました。いただいた宿題を全力でやりつつ、同時にクライアントにも次回商談までの宿題を出す。より良い提案をするためにも、フェアな関係って大事なんじゃないかなと思います。」

リモートでもメンバーを不安にさせない。上野流「オンラインマネジメントのコツ」
在宅勤務でコミュニケーションが取りにくくなったのは、クライアントだけではありません。期が変わるタイミング、チーム編成があったこともあり、上野さんは新しいメンバー3名と直接顔をあわせることなく、信頼関係を構築することが必要になりました。
「最初は手探りでやっていたんですが、5月に入って、”この状況はもっと長く続くかも”って、だんだん危機感が出てきたんです。そこで、メンバーとのコミュニケーション量はこれまでの2倍以上に増やしました。やったことは正直、どれも基本的なこと。ただ、“チームみんなに新しい発想が生まれるように” “自分から意見を発信しやすい環境をつくれるように” ということはいつも心がけていました。」
①Zoomを使った、朝礼/夕礼ミーティング 毎日の朝礼ミーティングでは、メンバーも私もそれぞれ目標を立てるんです。で、18時からの夕礼で「立てた目標が達成できたかどうか」を確認しています。達成できた時はみんなで「さすが!」「えらい!」と褒め合います。 ②盛り上げ上手なメンバーにサポートしてもらう 朝礼ではいきなり本題に入るんじゃなくて、雑談からスタートします。どのチームにもムードメーカーっていますよね。私は彼に毎朝チャットでお題を出してもらっていて。たとえば『昔の写真』とか『心理テスト』とか。雑談を通して、メンバー同士の相互理解を深めていきました。何気ない会話の中から、メンバーそれぞれの強みが見えてくることもあるんですよね。 ③気持ちが伝わるリアクションを 対面じゃない分、気持ちが伝わるコミュニケーションを意識しています。たとえば、メンバーから受注の報告をもらったときは、たくさん絵文字を使いながら「おめでとう!!!!!!!」と返信したり。ビデオチャットなら大げさめに拍手をする(笑)。反対に、メンバーに指導するときや適切な危機感を持ってもらいたいときは、絵文字も使いません。『○○してください』とだけ伝える時もあります。 |

その他にも、上野さんチームでは独自の取り組みをしていたそう。
■リモート架電大会 出社していた時は、同僚の頑張る姿を見て「自分も頑張らなきゃ」と思えるタイミングがありました。ただ、在宅になって、そういう機会がなくなってしまった。なのでうちのチームでは「リモート架電大会」というのをやっていて。「○時から○時までは架電タイム(お客様と電話でお話する時間)」と決めて、みんなそれぞれ電話するんです。架電タイムが終わったら、Zoomで結果を報告したり、アドバイスしあったり。物理的な距離はありますが、チームみんなで一緒に仕事をしている、という雰囲気を作ることができました。 ■週1の「自己研鑽発表会」 チーム全員の、インプットとアウトプットの機会です。テーマは様々で、たとえば本を読んで学んだことを発表したり、顧客との接し方や組織力、ビジネススキルを共有したり。業務以外で「自己研鑽したこと」を発表しあって、同時にみんなの成長につながる機会になればいいなと思いやっていました。 |
リーダーとして、今できることはなんだろう?と考える機会も増えたという上野さん。
「私なりに考えて出た1つの答えが、メンバーと会社をつなぐことなのかな、と。たとえば、全社・事業部・グループの業績進捗や方向性、今置かれている状況を常にキャッチアップして、メンバーに伝えたり。変化が激しい時代だからこそ、求められる現場情報も変わると思っていて。私がちょっとした変化を感じ取ってしっかりメンバーに伝えないといけないな、という意識が一層強くなりました。」

「今できることは何か?」を考え、最大限やる。それしかない。
「クライアントの状況も、私たちの仕事の仕方も大きく変わりました。ただ、それはどう頑張ってもすぐ変えられることではないですよね。だからこそ、その中で最大限できることをやるしかない、と思っていて。」
あらゆる業界のクライアントと接する上野さん。クライアントの状況が変わっていることも肌で感じているといいます。
「実際にメンバーからも”クライアントの採用計画が変わりました” “こんなとき営業として何をすればいいですか”という相談をもらいます。でも、そこで思考を止めるんじゃなくて、一歩踏み込んで見てみる。
・クライアント一社ごとの状況をヒアリングし、理解する
・クライアントの今後の展望を考えた上で、採用計画を考え直す
ということもできますよね。それに、周りに成果を出している同期や先輩がいたら、”どんな商談をしているんですか?”と聞くこともできるはず。やれることはまだまだあると思うんです。 」
そして最後に上野さんから語られたのが、すこし意外な言葉でした。
「ここまで色々語ってきましたが、私もリーダーとして、営業として、本当にまだまだで。苦手意識がある「問題分析力」や「数字管理スキル」も磨きたい。だから、マネージャーに時間をいただいて、毎週相談・報告できる場を作っていただいたり…。」
「ただ、“できない!悔しい!” “できるようになりたい!”と日々思うからこそ、前進できるのかな、とも思うんです。最初から全部できたら、たぶんつまらない。この前、他のリーダーから『上野さんてパッション営業だよね』って言われたんですけど(笑)。リモートでも在宅でも関係なく、まずは私自身が成長して、メンバーの成長を後押ししていきたいと思っています」
どんなときでも物事を冷静に捉え、「できること」を探す。そしてやり切る。それが、上野さんの強さなのかもしれません。
<編集後記> 社内外にファンをつくる上野さんですが、取材中、「できないことが多すぎて、気が滅入ることもある」「『前はもっとキラキラできてたのに…』と思うこともあります」という意外な言葉も飛び出しました。 これまで数々の社内賞を受賞してきたからこそ、周りの人から「上野さんだからできるんでしょ」と思われる可能性があります。そう思われないようにネガティブな想いも正直に話し、積極的に自己開示しているそうです。 ハイパフォーマーでありながら、身近に感じることができる。それが、関わった人をファンにしてしまう理由なんだと思います。 変えられない事実を受け止め、強く、前を向いて進んでいく。それが今、私たちにできることではないでしょうか。 |
【取材・文】安本実織 【編集】平野潤