「社員の活躍を考える際に役立つ、良い本ってないですか?」
最近、社内外を問わず、このような声を多くいただきます。 数多くのビジネス書や人事関連書がある中、どの本を読めばいいのか迷うことが多いようです。
抱える悩みは多種多様です。「採用できても上手く育たない。」「職場の雰囲気が悪い。しかし、何が原因かわからない。」「優秀な人材ばかり離職してしまう。」「社員にもっとやる気を出して欲しい。」「リーダーになったばかりで、どのようなリーダーシップを発揮すればよいのかわからない。」など。
有効求人倍率の上昇による採用難、転職市場の活発化によるリテンション難易度の上昇、働き方改革による生産性向上へのプレッシャー。企業を取り巻く環境の厳しさも、その悩みを深刻化させているのかもしれません。
そこで今回は、数ある関連書籍の中から「入社後活躍に役立つ書籍」を厳選して9冊ご紹介させていただきます。
(1)「職場で人を成長させる最も強力な方法」がわかる一冊。
『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか
すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』
著者 : ロバート キーガン, リサ ラスコウ レイヒー
出版社 : 英治出版
ページ : 400ページ
価格 : 2,700円(税込)
・人材育成の新潮流である「発達論」というアプローチが理解できます。
・発達論を用いて組織文化を変革した企業の先進事例を参考にできます。
・入社後活躍の根幹である、「自社の人材理念(人材哲学)」を見つめ直すきっかけになります。
従来型の教育のあり方に疑問をもつ方に、科学的根拠と事例をもとに21世紀型アプローチを示す1冊。著者は、現在普及しつつある「成人発達理論」の第一人者であるハーバード大学ロバート・キーガン教授。「職場で人を成長させる最も強力な方法は?」という問いに、正面から回答を試みています。
著者は、従来型の教育の問題点として次の4つを指摘しています。
①期間限定で提供され、継続性がないこと
②特別な内容であり、日常の仕事と乖離していること(学習成果の転移ができていない)
③対象のメンバーが限られること
④対象が個人であり、組織ではないこと
その上で、これらの問題を解決するアプローチを、理論と3社の事例をもとに紹介しています。
大事なポイントは2つ。
1つ目は、「発達」をベースに考えていること。人の成長には「人間性(知性)」と「能力」の2種類があり、特に前者の成長プロセスやメカニズムがあまり知られていません。特に日本では、人間性は気合論で語られがちでしたが、本書では4つの発達段階を明らかにするとともに、アプローチの仕方にも言及しています。
2つ目は、「組織文化」の面から考えていること。タイトルからは、単に「人に優しい組織」をイメージするかもしれませんが、人間的に成長していく上では、自分の弱点と向き合うという「痛み」が伴います。
時には厳しいフィードバックがなされることがあります。だからこそ、一人では難しい面があり、組織文化が鍵になります。
変化の激しい環境において、人間的な成長の実感を得ながら活き活きと働ける職場づくりのヒントが詰まっています。
(2)「人と組織を変革するための実践的手法」がわかる一冊。
『なぜ人と組織は変われないのか
ハーバード流 自己変革の理論と実践』
著者 : ロバート キーガン, リサ ラスコウ レイヒー
出版社 : 英治出版
ページ : 435ページ
価格 : 2,700円(税込)
・「変われない理由」をその人の感情や価値観から掘り起こす手法が学べます。
・研修を通じたスキル開発によって「変われない」という課題を解決できます。
・人材育成における部下との新しい関わり方を学ぶことができます。
変わる必要性を感じている人の85%は行動すら起こさないそうで、
その理由を解明しているのが本書です。
本書で提示される「免疫マップ」とは、「変わりたくても変われない」という心理的なジレンマの深層を掘り起し、変化に対して自分を守ろうとしているメカニズムを解き明かす手法です。
著者たちは、変革が進まないのは「意志」が弱いからではなく、「変化⇔防御」という拮抗状態を解消できないからだと説きます。変化するには、これまでの自分自身の一部を否定して、新しい考えを取り入れる必要がありますが、その際に、誰もが心理的な抵抗をしてしまうというのです。
単純な理論の展開だけではなく、長年の経験で培った実践的手法を紹介しており、組織のリーダーやメンバー、企業の経営陣、プロジェクトチーム、政府機関、教育機関など、さまざまな個人と組織の変革を導いた豊富な事例が詰まった一冊です。
(3)「モチベーションに関する主要な理論」を網羅した一冊。
『動機づける力 -モチベーションの理論と実践-』
編・訳者: DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部
出版社 : ダイヤモンド社
ページ : 296ページ
価格 : 1,800円(税抜)
・モチベーションに関する主要な理論をまとめて学べるため、組織マネジメントに幅を持たせることができます。
・経験則から導き出されていた勘や持論を、学術的なアプローチから補強できます。
・人や組織のモチベーションマネジメントに困った時に見返せば、現状打破のヒントが得られます。
個人・組織のモチベーションに関する世界的名論文を集め、「理論」をわかりやすく解説、「実践」するために経営者・マネージャー・人事が何をすべきかを提示している著書です。
「ハーズバーグの二要因理論」「マズローの欲求5段階説」「X理論とY理論」「ピグマリオン効果」などは、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
得てして、人材マネジメント・組織マネジメントは、経験則から導き出された勘や持論に頼りがちです。
本著を読み、ご自身の経験に置き換えていただければ、勘や持論を、学術的な根拠を持った理論にまで深化させられるはずです。また、各理論が整理されて解説されているため、モチベーションマネジメントに悩んだ際に見返せば、現状を打破するヒントが得られると思います。
人事や部下・組織のマネジメントに携わる方に、是非読んでいただきたい著書です。
(4)「若手社員への効果的な指導方法」がわかる一冊。
『「ゆとり世代」を即戦力にする5つの極意』
著者 : 伊庭正康
出版社 : マガジンハウス
ページ : 189ページ
価格 : 1,200円(税抜)
・「武勇伝→失敗談」「居酒屋→カフェ」「勝利→貢献」など、時代背景の変化を踏まえた効果的な指導ポイントが分かります。
・著者の実社会での経験に基づく事例が豊富で参考にしやすいです。
・理論背景の説明も丁寧にされており、応用が効きます。
タイトルの「ゆとり世代」だけでなく、あらゆる世代の
人たちの育成ヒントが詰まった書籍です。
著者はリクルートグループで営業部長、関連会社の代表を歴任し、20年に渡って「好業績を生み出す営業組織づくりの専門家」として活躍された方。実践に基づいた40の手法を、5つの極意に分けて紹介されています。
5つの極意とは、「相手の強みを伸ばす、プロデューサーになる極意」「主体性を引き出す極意」「信頼関係を作る極意」「相手のコミュニケーション力を育む極意」「相手のストレス耐性を高める極意」。
管理職や人事の方はもちろん、隣の席の後輩指導に悩む先輩方にもおすすめしたい1冊です。
(5)「戦略的な人材育成」のためのヒントが詰まった一冊。
『経営学習論 : 人材育成を科学する』
著者 : 中原淳
出版社 : 東京大学出版会
ページ : 272ページ
価格 : 3,000円(税抜)
・中途入社者や新入社員を早期に企業や職場に馴染ませる方法がわかります。
・従業員の職場での学びを、実際のパフォーマンス向上まで繋げる方法がわかります。
・基礎理論や調査データをもとに人材育成モデル全体を理解できます。
各企業に適した「人材育成施策」を考える際に役立つ著書です。
「いかに新入社員を育成すればいいのか?」「マネージャーにどんな経験を積ませて育成すればいいのか?」
このような課題の答えを見つけるヒントが満載です。
その他にも、「新入社員や中途入社者を組織に馴染ませる方法」「仕事そのものから学びを得る方法」「学びを
促進する職場コミュニケーションのあり方」「社外での学びの促進方法」などが、基礎的な理論と豊富な定量・
定性データをもとに紹介されています。
「経営・組織・学習」に関係する、ここ数十年の研究成果を総括し、人材育成の基礎理論・基礎概念を紹介
していることはもちろんですが、独自調査も豊富で、実践に役立つ内容となっています。
人材育成を担当する人事だけでなく、経営者やマネージャーの方にもおすすめの一冊です。
(6)「活躍する人と活躍しない人の意識の差」がわかる一冊。
『東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員』
著者 : 香川晋平
出版社 : 経済界
ページ : 200ページ
価格 : 800円(税抜)
・「入社後に活躍する社員とはどのような社員か」を理解することができ、採用時・育成時の参考になります。
・社員に「仕事を数字で考えさせる」ことができるようになります。
・何気ない会話から「黒字社員」と「赤字社員」を見抜くことができるようになります。
社員に活躍してもらうには、どのようなマインド(考え方)と知識(能力)を持たせれば良いのかが整理されています。
「東大卒」なのに、活躍しない人がいます。一方、「中卒」「高卒」などでも活躍し、会社に必要とされる人がいます。
つまり、「学歴」と「成果」は全く関連がないのです。たとえ学歴がなかったとしても、「ある意識」を身につけていれば活躍し、高学歴社員を超える成果を出すことができます。
では、このような違いを生み出す「ある意識」とは何か?それは「会社の利益に貢献する」という意識。会社の利益に貢献する人は「黒字社員」、会社の利益を減らす人は「赤字社員」です。
採用時に何を見ればよいのか。採用後にどのような育成をしてけばよいのか。このような視点でも参考になる一冊です。
(7)「採用時に何を確かめるべきか」がわかる一冊。
『採用基準』
著者 : 伊賀泰代
出版社 : ダイヤモンド社
ページ : 248ページ
価格 : 1,500円(税抜)
・企業にとっての入社後活躍(=成果を出す)につながる採用要件がわかります。
・採用した人が入社後活躍するための育成方法がわかります。
・仕事人生の充実(=個人にとっての入社後活躍)の必要要素がわかります。
マッキンゼーの採用マネージャーを12年務めた方による著書。
採用基準において一般にイメージされがちな「地頭のよさ」や「論理的思考力」よりも「リーダーシップ」を最重視しています。「リーダーシップ」は成果を出すため(=入社後活躍)万国共通で必要な要素であることを問いています。
誤解されがちなリーダーシップの正しい理解に始まり、全員がリーダーシップを必要と考える背景・理由、リーダーシップの育成方法が具体的に記載されており、実践に役立つ内容となっています。
本作により、入社後活躍(=成果を出す)に必要な要素が何であるかシンプルに理解ができます。
採用・人材育成を担当する人事はもちろん、経営者やマネージャーの方にもおすすめの一冊です。
(8)リーダーシップ理論の基礎と実践の仕方が学べる一冊。
『入社10年分のリーダー学が3時間で学べる』
著者 : 杉浦正和
出版社 : 日経BP社
ページ : 264ページ
価格 : 1,600円(税抜)
・感覚でマネジメントを行ってきた人は、ひとつ視点を上げることができる本です。
・リーダーシップについて、イチから体系立てて学ぶことができます。
・知識をインプットするだけではなく、自分ならどう組織に対してアクションするのかまで考えさせるため、学びが定着しやすいです。
著者は早稲田大学ビジネススクール教授の杉浦正和氏。
これからリーダーになる人や、新任幹部向けの本となっていますが、
リーダーシップの基本理論から、組織と役割、能力・キャリア開発まで、
この一冊で良くわかるようになっています。
・役割と行動
・指示と対話
・状況と対応
・目標と奉仕
・育成とエンパワーメント
・コーチングとファシリテーション
・ビジョン/ミッション/パッション/アクション
豊富な理論を図解でわかりやすく、
また1テーマにつき4ページ前後にまとめられているので、
ちょっとしたスキマ時間を利用して読むこともできます。
リーダー育成のためのテキストとして。あらためて自分自身の
管理職としてのあり方を整理するために使える一冊です。
(9)データを活用し、人事に客観性をもたらすための一冊。
『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』
著者 : 大湾秀雄
出版社 : 日本経済新聞出版社
ページ : 256ページ
価格 : 2,300円(税抜)
・データを用いた人事のPDCAサイクルの回し方がわかります。
・実例が豊富なので、人事のデータ化によるメリットがイメージしやすいです。
・難しいと思われがちな統計学をわかりやすく解説しているので、統計学の入門書としてもおすすめです。
ビジネスの世界ではPDCAサイクルを回すことが基本です。しかし、人事には、評価(Check)と改善(Act)が欠けています。
本書では「どの会社にも存在する人事データを分析してエビデンスを導きだし、人事施策のPDCAサイクルを回す方法」と「企業での実践例」が紹介されています。
詳しくは本書をご覧いただきたいのですが、人事データを活用するために五つのことが必要だとしています。①人事上の意思決定に用いたデータをすべてデジタル情報として保存すること ②人事データを一元管理すること ③統計リテラシーの高い人間を最低一人は人事部に配置すること ④統計ソフトを一つ購入すること ⑤業績指標を増やすこと の五つです。
また、活用事例では、「女性活躍支援」「働き方改革」「採用」「管理職評価」「高齢者雇用」の6テーマが取り上げられています。自社で課題に感じているテーマがあれば、解決のヒントになる一冊だと思います。
いかがでしたか。みなさまが抱えている悩みの解決に役立つ本はあったでしょうか。経営者の方、人事の方、部下を持つマネージャーの方など、それぞれの課題に適していれば幸いです。是非、気になったものから、手に取ってください。
書籍は、様々な理論や他者の経験則を効率的に学ぶことが出来ます。しかし、インプットだけで終わってしまいがちです。学びの定着は現場で使うことで促進されます。本を読みながら、ご自身の業務に置き換えて考えてみると、現場で使えるアイデアが浮かんでくるのではないでしょうか。今回の特集で取り上げた本が、貴社スタッフの入社後の活躍のきっかけになることを祈っています。
※尚、今回の書籍を選ぶにあたって、エン・ジャパンの入社後の活躍を支援する部署である、 「人材活躍支援事業部」から多くの推薦を貰いました。