「こんなはずじゃなかった」
入社後の期待における採用側、求職者の「ズレ」「ミスマッチ」は早期離職の要因となる。つまり入社後活躍にとって採用は大きなウエイトを占める問題だ。
今回取り上げるのは、服部泰宏氏の著書である「採用学」。ここに示されるのは、入社後の仕事業績の低迷につながる 「求職者の能力と企業が求める能力のズレ」。入社後活躍を考える上での必読書としてブックレビューをお届けしたい。
序章 「マネーボール」で起きたこと
第1章 「良い採用」とは何か?
第2章 ガラパゴス化している日本の採用
第3章 なぜ、あの会社には良い人が集まるのか
第4章 優秀なのは誰だ?
第5章 変わりつつある採用方法
第6章 採用をどう変えればいいのか
入社後活躍にとって採用時点でのマッチングは大きなウエイトを占める問題だ。
本書では個人が組織に参入し、そこでうまくやっていくために三つのマッチングが必要になると紹介されている。「期待のマッチング」「能力のマッチング」「フィーリングのマッチング」である。「期待のミスマッチ」は「離職」という帰結をもたらし、「能力のミスマッチ」は「仕事業績」の低迷につながる。
採用は、まだまだ科学的であるとは言いにくい分野である。「勘や経験」に基づいて判断されることが多い。そのため、上記で述べたようなミスマッチングが多くなってしまう。
そこに問題提起をしているのが本書である。
筆者は「採用学」の目的を、「組織と人がはじめて出会う『採用』という場面において、両者の良い出会いとお互いの発展を阻害する問題を明らかにし、その解決の方法を科学的に解き明かすこと。そのことを通じて、『採用』という観点から、『採用』に出来る範囲の中で、より良き社会の実現に貢献すること。」と定義している。
そして、本書によって科学によって導かれた良質な「論理(ロジック)」と「データに基づく証拠 (エビデンス)」をもとに、自社の採用を見直し、再構築するための「考え方」を紹介することを目指している。
また、本書では、各社が独自の採用を確立してくことによって、求職者の「企業選択のルール」を変え、知名度や規模で選ばずに、本質的な意味での採用・育成に優れた企業を高く評価する世界を創っていくことを採用学の目指す世界観だと述べている。
背景には、多くの求職者が「人気ランキング上位の企業を選んでしまうという思考停止状態」になっている日本への問題意識がある。
入社後活躍のためには、企業側の採用の変革とともに、求職者側の意識変革も必要だ。そのためには各社が「採用のデザイン力」を強化し、「新しい採用を打ち出すこと自体が当たり前の世界」にしていかなければならない。採用のデザイン力を強化する手法も本書には体系的に書かれている。
科学的に採用を考え、自社にとって最適な解を考えることが入社後活躍可能性の高い採用につながるはずだ。自社の採用を理論に基づきながら見直し、人材マネジメントを強化していきたいと考えている企業に是非オススメしたい。