採用した人材の活躍はどの企業にとっても重要な課題です。採用難の昨今では、尚更ではないでしょうか。
入社後活躍のために、各企業は様々な施策に優先順位をつけて、取り組んでいかなければなりません。 施策は「採用」「教育」「配置」「フォロー」など多岐にわたりますが、リソースは限られているからです。
しかし、どの施策に注力すればよいのでしょうか。施策ごとの効果検証のデータはありますが、各施策の重要度を比較する調査は、これまであまりされてこなかったように思います。そのため、貴重なリソースが 非効率に使われることもしばしばあったのではないでしょうか。
そこで、今回は「経営者・人事へのアンケート調査(中堅中小企業がメイン)」を基に、「入社後活躍のために最も注力すべき施策」を検証していきます。
この問題が解き明かされれば 「入社後活躍を実現する施策の優先順位」を理解することができます。重要なデータとなるのではないかと思います。
実施にあたり「入社後活躍」を 「早期活躍」と「定着」の2つのフェーズに分けて考えています。早期活躍という短期的な視点と、定着という長期的な視点では、効果のある施策は異なるのではないかと考えられるためです。
下記に調査の結果と考察をまとめています。是非、ご参考ください。
■調査方法:インターネットによるアンケート
■調査対象:『エン 人事のミカタ』(https://partners.en-japan.com/)を利用している経営者・人事
■調査期間:2017年4月26日〜5月25日
■回答数 :233サンプル
・早期活躍に最も効く施策、第1位「ミスマッチのない採用(43.3%)」第2位「入社後の育成(17.6%)」第3位「入社時の受け入れ体制(12.9%)」
・定着に最も効く施策は、第1位「入社後の定期的なフォロー(32.6%)」第2位「ミスマッチのない採用(24.9%)」第3位「配属先の環境(23.2%)」
・「入社後活躍のために最も注力すべき施策は何か?」について考察しています。是非、ご参考ください。
今回の調査結果の分析からは、入社後活躍のために最も注力すべき施策は「ミスマッチのない採用」であると導き出されました。調査結果のレビューと考察を下記に記載します。
最も多かった回答が「ミスマッチのない採用(43.3%)」。次いで、「入社後の育成(17.6%)」「入社後の受け入れ体制(12.9%)」という結果になりました。「ミスマッチのない採用」が、他の項目に圧倒的な差をつけています。 早期活躍には「ミスマッチのない採用」が重要だと、多くの経営者と人事が考えていることがわかりました。
なぜ、経営者と人事は「ミスマッチのない採用」が重要だと考えているのでしょうか。アンケートのコメントから考えてみたいと思います。「ミスマッチのない採用」を選択した経営者・人事からのコメントをカテゴライズすると、以下の2つのコメントに集約されました。
①「採用時の相互の理解納得がベースに無いと、入社後に感じるギャップをネガティブな方に捉えやすくなる」
②「ミスマッチがあれば、入社後に何をしようと効果が最大化されることはない」
ここから言えることは2つあると思います。 一つ目は入社前と入社後にギャップがあると活躍どころではなく、早期離職してしまうこと。二つ目は、入社後の教育や配置・フォローでは補えない要素があることです。 経営者・人事の方は、この二つを経験から理解しているため、早期活躍には「ミスマッチのない採用」が最も効くと判断していると考えられます。
なぜ、経営者と人事は「入社後の定期的なフォロー」が重要だと考えているのでしょうか。アンケートのコメントにあるように、入社後には様々なことが起こります。入社前に聞いていた仕事内容や社風とのギャップを感じることもあります。予期しない家族の問題が起こることもあります。そうした問題を早期に発見し、解決していくことが定着につながります。そのため、状態を把握するための定期的なフォローは非常に効果的です。多くの経営者・人事が「定着」に効果があると考える理由はここにあると考えられます。
しかし、 定着に関しては早期活躍ほど、経営者・人事に統一の見解もないことがわかります。 早期活躍の調査結果と比較すると、上位3項目間のポイント差は小さいためです。
早期活躍の調査ほど統一の見解がない理由は、 「定着には様々な要素が影響し合う」ため、特定の施策に回答が偏りづらいからだと推測されます。つまり、 定着には、特定の施策が効果的なのではなく、バランスが大事である と考えられます。
これらの調査結果を総合して考えると、『入社後活躍のために最も注力すべき施策は「ミスマッチのない採用」である』ということが言えます。「ミスマッチのない採用」は「早期活躍において43.3%」、「定着において24.9%」の経営者・人事が最も効果的だと考えており、他の施策と比較して、最も支持されているからです。
リソース不足の企業においては、まず採用に注力することが入社後活躍に向けて効果的だと言えるでしょう。採用を中心に人材マネジメントを考えていくことで、入社後活躍が増え、企業の発展にも繋がっていくのではないでしょうか。
調査データの詳細は下記です。
この章では、早期活躍に最も効く施策は何かについて考察をします。まず、アンケート結果をご覧ください。
【Q1】中途採用した人材が早期に活躍するために、最も大切だと思われることを、以下の中からお選びください。
「ミスマッチのない採用(43.3%)」が一位。次いで、「入社後の育成(17.6%)」「入社後の受け入れ体制(12.9%)」。「ミスマッチのない採用」が圧倒的多数となりました。経営者・人事の大半が、「ミスマッチのない採用」が最も重要だと考えていることがわかります。次は、その理由を探っていきます。
■「ミスマッチのない採用」を選んだ理由(43.3%)
・ミスマッチがあればいかに教育しても辞めてしまうため。(商社/51名~100名/直接関与しているが、決裁権はない/部長クラス)
・ミスマッチがあれば入社後に何をしようと効果が最大化されることはないから。(不動産・建設関連/50名未満/直接関与していないが、決裁権はある/経営層・役員クラス)
・会社側のニーズ、応募者の意向がマッチしないとそもそも活躍する前に挫折すると思う。(流通・小売関連/50名未満/直接関与していて、決裁権もある/部長クラス)
・採用時の相互の理解納得がベースに無いと、入社後に感じるギャップをネガティブな方に捉えやすくなる。(金融・コンサル関連/101名~300名/直接関与していて、決裁権もある/部長クラス)
・業態が特殊なため、合わない人はどうOJTや研修をしても続かない。(その他/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/係長・主任クラス)
■「入社後の育成」を選んだ理由(17.6%)
・どんなに実力のある人材を採用しても、育成しなければ活躍出来ないから。(金融・コンサル関連/501名~1000名/直接関与しているが、決裁権はない/一般社員クラス)
・面接や試験だけでは、採用者の20%程度しかわからない。残り80%を知る上でも、適性を見る上でも、採用後の育成が最も重要だと考えている。(その他/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
・中途入社者にはいろんな個性やレベルの方々がいるので、見極めた上での育成が重要だと感じている。(サービス関連/50名未満/直接関与していて、決裁権もある/経営層・役員クラス)
■「入社時の受け入れ体制」を選んだ理由(12.9%)
・中途採用者はできあがった環境に入ってきます。環境適応への不安は大きいと思いますが、それを解消し、環境に慣れることができれば活躍につながると思います。(メーカー/50名未満/直接関与していて、決裁権もある/部長クラス)
・入社時にいかに必要とされているかを伝えることでモチベーションを上げてもらうことが重要だと考えます。(サービス関連/301~500名/直接関与しているが、決裁権はない/係長・主任クラス)
・いい人を採用しても、入社後に早期に活躍できるかは、受け入れ態勢×教育だと思うため。(IT・情報処理・インターネット関連/50名未満/直接関与していて、決裁権もある/部長クラス)
■「入社後の定期的なフォロー」を選んだ理由(11.6%)
・前職と全く同じ環境ということはあり得ない。どんなに実力がある人材を取っても、フォローしなければ活躍は難しいと思う。(メーカー/1001名以上/直接関与していないが、決裁権はある/経営層・役員クラス)
・人間関係が重要。人間関係を構築するためには定期的な声掛けが重要だから。(不動産・建設関連/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
・最初は仕事を覚えるのに一生懸命だと思いますが、ある程度覚えてきたときのフォローはすごく大事だと思われます。(その他/101名/~300名/直接関与しているが、決裁権はない/一般社員クラス)
■「配属先の環境」を選んだ理由(10.3%)
・どんなに良い人材でも、やはり一緒に仕事をするメンバーとの関係が良くなければ、力も発揮できないと思います。(メーカー/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/係長・主任クラス)
■「配属先の選定(配置)」を選んだ理由(4.3%)
・中途入社者の「経験」を十分に理解して採用し、適切なポジションに配置することが成果がでる早道だと思う。(商社/50名未満/直接関与していて、決裁権もある/経営層・役員クラス)
最も選択率が高かった「ミスマッチのない採用」の選択理由では、「ミスマッチがあると、入社後にいかに教育、フォローをしても効果がない」「ミスマッチがあると、活躍する前に挫折し、離職してしまう」という声が多数を占めました。
この章では、定着に最も効く施策は何かについて考察をします。まず、アンケート結果をご覧ください。
【Q2】中途採用した人材が定着するために、最も大切だと思われることを、以下の中からお選びください。
最も多かった回答が「入社後の定期的なフォロー(32.6%)」。次いで「ミスマッチのない採用(24.9%)」、「配属先の環境(23.2%)」という結果になりました。次は、その理由を探っていきます。
次に、経営者・人事が上記の選択肢を選んだ理由を抜粋して記載します。
■入社後の定期的なフォロー(32.2%)
・こちらが完璧だと思って提供していることでも、人により何かしら不具合があるはず。定期的なフォローにより、その情報を掴み、解決していく必要がある。(IT・情報処理・インターネット関連/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/係長・主任クラス)
・直属の上長や先輩には言えないことを、管理部門が定期的にフォローや相談にのることで、本人の不満や組織・システムの欠点が見えてくる場合もある。(その他/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
・定期的なフォローにより、いつも見てくれているという安心感と評価されているという満足感が生まれ、定着に繋がると考えるため。(サービス関連/51名~ 100名/直接関与しているが、決裁権はない/部長クラス)
・本人が思い描いていた、仕事内容や環境の相違点を見出す為に必要と思う。(メーカー/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
■ミスマッチのない採用(24.58%)
・フォローなども大事だと思いましたが、採用段階のミスマッチがあるとそうしたフォローもいきてこないため。(IT・情報処理・インターネット関連/50 名未満/直接関与していて、決裁権もある/部長クラス)
・入社後のフォローも大事ですが、選考時に職場環境や条件面などを隠し立てせず正しく提示し、求職者側の情報や不安要素なども可能な限り事前に提示していただいた上での採用・入社となれば、早々に退職希望が出るようなことは無いと思います。(メーカー/101名~300名/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
■配属先の環境(23.31%)
・人は環境に大きく左右される。配属先のビジョンや士気、マネジメント環境が人を大切に、もっと言うと、向き合える付き合い方ができているか。ちょうど良い距離感を人間関係でつくることができるかどうか。(不動産・建設/101名~300名/直接関与しているが、決裁権はない/係長・主任クラス)
・どれだけ適材で、どんなに手厚くケアしても、配属先の環境が悪ければ、社への帰属意識が薄れて離職につながるため。(広告・出版・マスコミ関連/101名~300名/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
■入社後の育成(12.29%)
・研修期間に出来るだけ時間をかける。また、その後の進捗度合いに応じて業務を増やすことにより、本人に自信を持たせ継続して業務を行わせることが定着に繋がると思うから。(流通・小売関連/301~500名/直接関与していて、決裁権もある/部長クラス)
・初回だけでなく、定期的に研修を実施しています。 定期的に実施することで、知識だけでなく、 コミュニケーションもとれ、定着に繋がる。(メーカー/101名~300名/直接関与していないが、決裁権はある/部長クラス)
■入社時の受け入れ体制(5.2%)
・やり方が違ったり、考え方が違ったりするために、 自分たちのやり方を通すだけではなく、 中途社員の話を聞き、受け入れてあげる受け入れる体制が大切だと思ったため。(IT・情報処理・インターネット関連/501名~1000名/直接関与していないし、決裁権もない/一般社員クラス)
・良い人材を採用できても受け入れ体制が出来ていないと長続きしないため。(IT・情報処理・インターネット関連/50名未満/直接関与しているが、決裁権はない/部長クラス)
■配属先の選定(配置)(2.1%)
・定着の観点では、配属先の構成メンバーとの相性が何よりも影響を及ぼすため。(IT・情報処理・インターネット関連/101名~300名/直接関与しているが、決裁権はない/課長クラス)
最も選択率の高かった「入社後の定期的なフォロー」では、「入社後の問題を早期に発見し、解決することが重要」「現場の上司には言えない不満を聞き出すことが大事」という意見が多くを占めました。
いかがだったでしょうか。今回の特集が、入社後活躍を実現するためのリソースの効率的な使い方の参考になりましたら、幸いです。