『オネストリクルーティング』と入社後活躍の相関に関する調査
~定着⽀援サービス「HR OnBoard」3872名の分析から~

2020/07/22 UPDATE
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 エン・ジャパンでは、2019年2月より「エン転職」を利用していただいた企業に、社員の離職リスク可視化ツール「HR OnBoard」の無償提供を行なって参りました。入社した方の定着・活躍を支援し、また、そのデータを用いて「入社後活躍の実態」についても調査を進めています。

 今回、そのデータを用いて、当社が提唱する 『オネストリクルーティング』の効果検証をいたしました。 『オネストリクルーティング』とは、求人企業が 「事実性、率直性、改善性」に基づいた正直な情報を、求職者に提供することよって、入社と入社後活躍の可能性を高める採用手法のことです。

  「事実性」に基づく情報提供とは、入社前に、ありのままの事実を歪めることなく伝えることです。事前に現実を理解してもらうことによって、入社後のリアリティショックを防ぎます。「率直性」と「改善性」は企業について書かれたクチコミサイトとの連携が必要です。「率直性」に基づく情報提供とはクチコミサイトに書かれている自社の評判について、率直に意見を述べることです。批判的な内容であっても、あえてそうすることを選択しているのであれば、それを素直に伝えることが大切です。求職者のセルフスクリーニングにつながり、入社者の質が高まります。 「改善性」に基づく情報提供とはクチコミで書かれているネガティブな評判に対して改善の意思を表明することです。クチコミを真摯に受け止め、これからどのように改善していくのかを述べる。求職者から誠実な企業だと認識され、応募意思の増大と入社後の組織コミットメントに繋がります。エン転職はこの『オネストリクルーティング理論』を用いて企業の支援を行なって参りました。

 本調査では、『オネストリクルーティング』の効果を検証するために、「HR OnBorad」から抽出した2つのデータを用いて、「エン転職経由の入社者」と「その他の採用手法経由の入社者(※)」を比較分析しています。比較項目は 「入社から1年後の定着率」、「入社後の活躍実感」、「今の職場で今後も継続して働いていきたいと思っているかどうか(就業継続意思)」、「定着率・入社後の活躍実感・就業継続意思に影響を及ぼす要因」の4つです。

 『オネストリクルーティング』は入社後活躍に寄与しているのか。調査データから分析・考察します。

※「HR OnBorad」に登録された利用者のうち、エン転職経由でない入社者(他の転職サイト、人材紹介、HP、リファラル経由など)のことを指します。

<調査データⅠ>
調査対象:定着支援サービスHR Onboard利用者 3872名(2017年12月~2019年6月に入社した方)
調査方法:定着支援サービスHR OnBoard利用者の1年後定着率を計算
※利用者3872名を分母、1年以上在籍した方を分子として計算 
※「在籍」の定義は、HR OnBoard利用企業が登録者を「退職」にフラグ変更していないこと

<調査データⅡ>
調査対象:定着支援サービスHR OnBoard利用者で、入社から1年が経過した方 1239名(有効回答)
調査方法:webアンケート
調査期間:2020年4月1日~6月29日

調査のサマリ

『オネストリクルーティング』は「その他の採用手法」より 入社後活躍に寄与していることが判った。
●入社1年後定着率は「エン転職」が88.6%、「その他の採用手法」が76.2%となった。
●「活躍実感」に関するアンケートで、「当てはまる、やや当てはまる」と回答した方の割合は、4つの項目のうち3つで「エン転職」が上回った。残り1つは差がなかった。


●就業継続意欲は「エン転職」が59.9%、「その他の採用手法」が46.4%。
●「定着率・活躍実感・就業継続意思」を促進する要因の中で、「エン転職」と「その他の採用手法」の差が開いた項目は「入社前イメージと現実のマッチング」と「コミュニケーション風土」、「入社者歓迎風土」、「業務過多」だった。

調査の詳細
①定着率(入社一年後)の比較

エン転職が88.6%、その他の採用手法が76.2%となりました。


②「活躍実感」の比較

 活躍実感は「貢献実感」「仕事フィット」「職場フィット」「被信頼感」の4つの指標で測っています。「当てはまる、やや当てはまる」と回答した方の割合は、4つの項目のうち3つで「エン転職」が上回り、残り1つは差がないという結果となりました。


<活躍実感を測定する尺度について>
 今回の調査では「入社者が今の職場で活躍している」ことを測定する尺度として「貢献実感」、「仕事フィット」、「職場フィット」、「被信頼感」を用いています。本人が「活躍している」と実感するには、企業から求められる成果を出している(貢献実感)だけでは十分ではありません。仕事や職場に対する満足感や充足感(仕事フィット、職場フィット)、上司から信頼されている実感(被信頼感)があってこそ、活躍実感が得られると考え、この尺度群を用いています。


③就業継続意思の比較

 就業継続意思とは、入社者が今後もその会社に長く居続けたいかを測る尺度です。高いほどその会社での未来に希望を持っており、会社への満足度が高い状態であると言えます。「当てはまる+やや当てはまる」と回答した方の割合は、エン転職が「59.7%」、その他の採用手法が「50.7%」となりました。





④「定着率・活躍実感・就業継続意思」に影響を及ぼす要因の比較
 「定着率・活躍実感・就業継続意思」に影響を及ぼす要因として「入社前のイメージと現実のマッチング」「上司サポート」「組織風土・職場サポート」「ストレス要因」を用いました。これらの項目を利用して「エン転職」と「その他の採用手法」の入社者を比較したところ、差が開いた項目は「入社前イメージと現実のマッチング」と「入社歓迎風土」、「コミュニケーション風土」、「業務過多」の項目でした。



<活躍実感と就業継続意思に影響を及ぼす要因について>


●仕事内容のイメージと現実のマッチング

質問内容
・現在の仕事内容は入社前のイメージに近い
・仕事の進め方(段取りや手続きなど)は入社前のイメージに近い
 仕事内容や仕事の進め方が入社前のイメージと齟齬がないかを測っています。この項目が高いほど、入社者は入社前から仕事に対する現実的な情報を得ることが出来ていたことになります。仕事内容が想定と違っていると、入社者は失望し、モチベーションや組織コミットメントの低下を引き起こします。また、組織への適応を妨げることにも繋がります。

●同僚のイメージと現実のマッチング

質問内容
・社員の雰囲気は入社前のイメージに近い
・社員の業務知識やスキルレベルは入社前のイメージに近い
 職場の社員の雰囲気、同僚の業務知識やスキルレベルが入社前のイメージと齟齬がないかを測っています。この項目が高いほど、入社者は同僚の雰囲気や能力について現実的な情報を得ることが出来ていたことになります。職場の雰囲気に違和感を感じたり、同僚の能力への期待が外れると、モチベーションや組織コミットメントの低下、組織適応への阻害を引き起こします。

●給与・待遇のイメージと現実のマッチング

質問内容
・賞与額は入社前の期待を満たしている
・昇給の金額・タイミングは入社前の期待を満たしている
 賞与額や昇給の金額・タイミングが入社前のイメージと齟齬がないかを測っています。この項目が高いほど、入社者は賞与や昇給について、現実的な情報を得ることが出来ていたことになります。ボーナスの金額や昇給スピードが自分の想定を下回ると、入社者は会社に対して幻滅し、離職意思に直結してしまいます。

●コミュニケーション風土

質問内容
・他のメンバーに対して躊躇なく自分の意見を発言できる職場だ
・職場では活発なコミュニケーションが行き交っている
 新しい環境で問題に直面している中途入社者が、気軽に相談したり、コミュニケーションを取りやすい環境であることが、パフォーマンスに影響を及ぼすことが考えられます。コミュニケーションが活発な職場の方が多くの同僚と関係性を構築しやすく、仕事で遭遇した問題についても相談しやすくなります。

●入社者歓迎風土

質問内容
・入社時に自分を歓迎してくれるイベントがあった
・新しく入社する社員を歓迎する風土がある
 上記の「コミュニケーション風土」と同じで、中途入社者が、気軽に相談したり、コミュニケーションを取りやすい環境を作ることが、中途入社者のパフォーマンスに影響を及ぼします。入社時に歓迎の気持ちを表現することで中途入社者はコミュニケーションを取りやすくなります。

●業務過多

質問内容
・残業が多い
・常に多くの量をこなす必要のある仕事だ
 現在の仕事はその人の業務キャパシティを超えていないかどうかを測っています。この項目が高いほど、入社者は現在の業務に対して業務過多を感じていることになります。本人のキャパシティを超えて業務を任せすぎると離職意思に繋がってしまいます。

※①は「調査データⅠ」、②~④は「調査データⅡ」を用いています。

まとめ
 今回の調査によって、『オネストリクルーティング』は「その他の採用手法」より入社後活躍に繋がりやすいことが判りました。「エン転職」の方が「その他の採用手法」より 「定着率・活躍実感・就業継続意思」が高かったこと。その3つを高めている要因が『オネストリクルーティング』によって生み出されていること。これらがその理由です。

「定着率・活躍実感・就業継続意思」を高める3つの要因とは、「入社前イメージと現実のマッチング」「コミュニケーション風土・入社者歓迎風土」「業務過多を感じることが少ないこと」です。

 1つ目の「入社前イメージと現実のマッチング」は入社後活躍にとって非常に重要です。仕事内容や職場の同僚、給与・昇給に対して、入社前のイメージと現実の間にギャップがあると「リアリティ・ショック」を引き起こします。「リアリティ・ショック」とは人が新しい社会、新しい組織、新しい状況に直面した際に、その人がそれに対して事前に抱いていた期待と、彼(女)自身が実際に目にした現実との間のズレによって引き起こされる「衝撃」のことを指します。この衝撃が大きいほど、組織コミットメント、モチベーションの低下、離職意思の増大というネガティブな結果を招きます。

 2つ目の「コミュニケーション風土」、「入社者歓迎風土」も入社後活躍にとって重要なポイントです。職場に適応し、活躍する。そのためには、上司や同僚とたくさんのコミュニケーションを取らなければなりません。入社時に歓迎され、コミュニケーションが活発な職場であれば、それは容易に達成されます。

 3つ目の「業務過多」の項目も大切です。業務量がその人のキャパシティを超えた状態が続くと、離職に繋がることが分かっています(なぜ人は辞めるのか?退職を科学する)。入社者の能力や状態に適した業務量をアサインすることはもちろんですが、実はこの項目も入社前のイメージと関わってきます。たとえ、業務の量が多かったとしても、入社前にイメージが持てていると、そこまで強いショックを受けることはありません。

 これらは「事実性・率直性・改善性」に基づく情報提供を行なう『オネストリクルーティング』から生み出されたと考えることができます。「事実性」に基づく情報提供は、入社前の期待を適切にコントロールし、1つ目と3つ目の結果に繋がります。

 「率直性・改善性」は、求職者に組織の誠実さを感じさせ、組織に対する愛着や帰属意識を高めることに繋がります。「エン転職」の正直な情報を見て入社した方は、組織へのコミットメントが高くなるため、「コミュニケーション風土」や「入社者歓迎風土」を知覚しやすくなります。これが2つ目の結果に繋がったと考えられます。

 今回の調査によって、『オネストリクルーティング』の有効性は実証されましたが、まだまだ改善できる余地はたくさんあります。今後も検証を繰り返しながら、より良いサービスの提供ができるように尽力してまいります。
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